今迄の不動産業者は、宅地建物取引員として要求される最低限の知識、経験を習得することを以て足りたが、今後は不動産業経営合理化のための研究と努力如何が業者の運命を決する時代に入ったとみてよい。
では、一体「合理化」というお題目は、実際に吾々は、どう為すべきか、ということになるが、以下、マルテイブル・リスティング(共同斡旋契約)方式について述べよう。
共同斡旋契約とは、2名以上の不動産業者が、物件情報の交換と売却への協力を目的として結成した組織を通じて行われる斡旋形態であって、遠く1921年にロスアンゼルス不動産協会が生まれ、全米に拡がり現在地域によっては、共同斡旋団体加盟が強制され、凡ての物件を協会の共同斡旋事務局に登録する義務を負わされている。
運営法について述べると、不動産業者は一定時間内に物件情報を共同斡旋事務局へ送付し、事務局は物件情報資料を加盟会員に配布し、会員は物件受付業者と物件売却業者とに分かれ一対一となり、会員相互が処理し手数料の分配については詳細な規定がある。
要するに共同斡旋組織は、手数料を確保しつつ多数会員の協力によって、物件売却の能率化を実現しようとするもので進歩的である。さて今、私どもがこの共同斡旋システムによるリスティング協会を作った場合のことを考えてみますと、実に素晴らしい効果が考えられます。
- 協会員は、顧客の信頼を高め、業者の手数料収入を確保し、依頼人と業者、業者相互間の倫理規程を確保し得る。
- 協会員は、多数会員の支持によるから、売却処理は合理的で、かつ過重な負担がない。
(又取引は売買一対一の姿になる。) - 材料の信憑性、取引の態度、経過が見通せるので、経営計画が策定される。
- 営業経費が激減する。
(不確定な材料で費す諸経費、精神的浪費、引合いの混雑に伴う過重サービス、人件費、事務費等が不要になる。) - 営業範囲の拡大、バラエテイに富み、生彩のある営業、系統的・直線的なマーケッテイングが展開される。
- 依頼者に対する忠告・指導は、公正な立場から権威をもって協会がするので、苦情のあるときは、権威をもてる。
その他については冗説を要しない。帰するところ、紳商グループ或は業界のロータリヤンとして、高次な活動とすることによって、無限の可能性を生じます。
現在、宅造組合、宅建組合があり、斡旋業者では、のれん会等もありますが、このL協会のように“取引活動が凡ての目的であり手段である”という、ハッキリしたものは見当りません。
以上、合理化の一方途について述べましたが、現今の経済状態、業界の先進国としてのアメリカの現状からみても、吾々が着手すべき問題と考えるものであります。
昭和40年1月吉日
札幌不動産リスティング協会